『微光』

影がながくのびるころ
彼はいつも犬をつれてきた
葉を細かにゆらす風とともに
ひとこともなく

しずかな犬がひくのか
彼がひくのか
記憶がひくのか
夕日は落ちかかっていた
らんらんと景色を引きこみながら

遠くから聞こえてくる低い重音が
しずかな犬をひく
彼は犬の足音にひかれ
奥底まで下りてゆくよう

犬は水先人なのだ
とても広々とした世界にいて
ひとこともなく
彩雲をめじるしに
彼をひきつづける
静止したままの姿で

犬のこころを想像する
宙空から彼のもとへ
ひとこともなく
いつも訪れるこころ
彼を離れないこころ
ただ彼を引くこころ

一歩一歩にこころが灯る

しずかな足先から手綱をつたい
それは
彼へ流れつづけた

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